ビジネス書にもなる小説『望郷の道』北方謙三
こんにちは、ぽわろんです。
今日は歴史小説、ハードボイルド小説で有名な北方謙三さんが、菓子屋創業者である曽祖父をモデルに書いた『望郷の道』(上下巻)の紹介です。
本のあらすじ
2007年8月から約1年に渡り、日経新聞に連載されていた、経済小説。
当時のビジネスマンが、毎朝この連載を読み、どれだけ心を熱く燃やしたことだろうと想像に難くない、熱くドラマチックな作品です!
日本経済勃興期の明治、佐賀県内で実家の賭場を継いだ男気溢れる女将、藤 瑠瑋。
そんな瑠偉に惚れ込み、藤家に婿入りした九州男児の正太が、才覚を発揮しながら人生を賭けて一から事業を興していく、立身出世の物語。
北方さんの歴史小説、ハードボイルド小説にも共通する"男の生き様"を見事に描いています。
とにかく正太の逞しさ、家族を守ろうとする姿勢、商売にかける情熱がかっこいいのです。
商売を始めた正太は、どう利益を出すか、いかにファンを作るか、腰を据える時と拡大する時の見極めを常に考えています。
また、成功したらしたで、常に同業界の人に目をつけられ足を引っ張られ、引きずり下ろされる。
その駆け引きの中、どう生き残るか。
そんなスリルいっぱいの展開も、正太の人間性の素晴らしさを際立たせるエピソードになっています。
また、瑠瑋との役割分担も絶妙で、見事な二人三脚なのです。
心に残った言葉の引用
上巻より
やりたいことなど、見つけるのではなく、むこうからやってくる。そういうものなのだろうと、いまは思う。瑠瑋を幸福にするために、懸命に生きる。それは紛れもなく男の人生だ、と正太は考えていた。(p.73)
「やめとかんね。断る時は、丁寧に、丁寧にじゃ。横柄に断っちゃいけんよ。」(p.149)
「夢ば、夢としか考えられん人間ば、俺は認めようとは思わんとです。」(p.297)
「せっかく、生きとるんじゃもんな。ほんなこつ、生きとったと思いたかよ。」(p.401)
「俺は、来年は、火の玉んごつなるばい。男の人生にゃ、そがん時期のなからんばいかんと。そん時期が来とる。間違いなく、来とる。」
「あたしも、感じとるたい。出目の流れの、変りはじめとるとよ」
「博奕ばしとるとか。おまえ」
「そいで、あたしは、あんたに張っとる」
「そがんか。おう、わかったばい。すってでん、俺のせいじゃなかぞ」
「そがんもん、はなから覚悟のでけとる」
「さすが藤 瑠瑋たいね」(p.412)
まとめ
初めてこの本を読んだ時、理想的な男の生き方を見た気がしました。
そして、その男に連れ添う女の幸せも見ました。
実はぽわろんは北方作品のファンでして、色々なジャンルを読みましたが、その中で、良質なビジネス書としてもオススメできます。
個人的に…サキという登場人物にも、女としてはリアルに共感してしまう。
それくらいかっこいいです、正太は。笑
感動の後に、ああ…一生懸命、"火の玉んごつ"生きなくちゃと思わせてくれる作品です!