これぞ文章のお手本『父の詫び状』向田 邦子
こんにちは、ぽわろんです。
今日は向田 邦子さんのエッセイ、『父の詫び状』を紹介します。
国語の教師をしている友人が、その昔国語の教科書に載っていたのを読んで、1番好きな本になったそう。
ずっとオススメされていたのに、10年以上読めなかった。
なぜなら、ぽわろんはエッセイより物語が好きなので、エッセイというだけで、どうしても食指が動かなかったのです。。(ごめんなさい)
ところが昨年のぽわろんの誕生日、友人からこの本をプレゼントされたのです。
これは、年貢の納め時。
いよいよ読まないといけません。
ぽわろんの重い腰を見て取ったのか、
「これはね、内容よりも文章がとにかくすごいから」
と一言。
む、文章がすごい…?
むくむく興味が湧いてきます。
ということで、ようやく昨年読みました。笑
そして、
拙い表現ですが…
すごい、よかった!
のです。
読ませる文章
昭和53年。
当時、脚本家として活躍していた独身の向田邦子さん。
内容は、タイトルの通り父を始めとする家族の回想が中心となったエッセイ集。
自分の子ども時代、家族でどういう生活をしていたか。
一つひとつの思い出を丁寧に切り取って、生き生きと描いています。
やはり圧倒されたのは、文章の巧みさ。
例え戦時中の死を覚悟した時の話でも、病気の話でも、なぜか暗い雰囲気になりません。
それはユーモアたっぷりに描かれているからでしょう。
そして、話の転換、テンポがまた上手い。
最近の話をしていたかと思うと、◯◯と言えば、という感じでいつの間に子どもの頃の話になっていて、現在と過去を行ったり来たりします。
それが、あまりに自然で、全く混乱させることなく、むしろ話に味わいと深みを与えています。
一話は短いのですが、その中の展開、起承転結の構成が秀逸で、行ったり来たり脱線しているようで、最後にはちゃんと着地するのはお見事!とため息をついてしまいます。
この本の影響
この本を読んで、ぽわろんは人生で初めて、「私も文章を書いてみたい」と思いました。
ぽわろんは昔から文章に苦手意識があります。
本が好き=文章が得意、というイメージがあるらしく、人から安易に「作家になればいいじゃない」「本を書いてみれば?」と言われた経験も幾度となくあります。
しかし、それに乗せられて、作家を志す気持ちには1ミリもなりませんでした。
だって、作家さんになるって、ぽわろんにとってはプロ野球選手になるくらいの有り得ない話。
でも、この本を読んで、文章をこんな風に書けるって素敵だなあと、大いに感銘を受けました。
それから1年、ブログを始めた今、思い出すのはこの本です。
人生で初めて、何でもいいから文章を書いてみなよ、と背中を押してくれた本なのかも知れません。
そして、自分の人生をこんな風に記録できるというのも、いいものです。
向田邦子さんは、航空機事故で亡くなっています。
そんな不運があるのか…と思いましたが、この自伝とも言えるエッセイが世に残っているということは幸運なことで、まさに向田さんが生きた証です。
今自分が死んだら、自分が生きた証は果たしてあるでしょうか。
そんなことにも思いを馳せてしまいました。