ぽわろんの推理ノート

仕事について、人生について、人間のあれこれを考察します

クリスティ好きにもオススメの本格ミステリー『ジェリーフィッシュは凍らない』市川憂人

こんにちは、ぽわろんです。

 

市川憂人さんのデビュー作にして鮎川哲也賞受賞作の『ジェリーフィッシュは凍らない』を読みました。

 

ジェリーフィッシュは凍らない

ジェリーフィッシュは凍らない

 

 

 

まさひろさんのこちらの2作目のレビューを読んで、気になっていたのです。

眠れないという気になるレビュー、ありがとうございます!

 

でも続きものなので、1作目から。

 

結果、一気読みです(о´∀`о)

本格ミステリー好きには、直球ど真ん中です!

 

そして誰もいなくなったのです!

アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』は世界で1億冊以上売れた大ベストセラーです。

 

こんなお話。

クローズド・サークル、つまり逃げ場もなく、外からの助けも望めない孤島で起きる連続殺人事件。

犯行が重なるにつれ、自然と犯人が限られてきて、残された人は次は私の番?という恐怖と、誰も信用できない疑心暗鬼で恐慌状態に陥ります。

こんな時、単独行動を起こしちゃう人に死亡フラグが立ったり、じゃあみんなで一緒にいようと言っても殺されたり。

クリスティのすごいところは、「そして誰もいなくなった」、つまり犯人どこいった!?という度肝をぬかれる設定を作ったこと。

 

そんなクリスティ作品に敢えてなぞらえた作品も多いですね。

 

有名なのは綾辻行人さんの新本格ミステリー、

十角館の殺人』。

 

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

 

ミステリー好きほど、きっと騙されちゃう、文句なしに面白い作品。

 

 

また、米澤穂信さんの『インシテミル』。

 

インシテミル (文春文庫)

インシテミル (文春文庫)

 

こちらは、『そして誰もいなくなった』と『ライアーゲーム』と『バトルロワイヤル』を足して3で割ったような(いい意味で)感じのゲーム要素のある設定ですが、面白い。徹夜本です。

 

そして、今回の『ジェリーフィッシュは凍らない』も、クリスティの設定に挑戦し、見事に完成させています。

ミステリー作家さんにとって、クリスティをここまで自分色にして新しい作品を創り上げることは、ミステリー作家冥利につきる偉業なのではないでしょうか?

 

本の概要

舞台は80年代のU国。

特殊な技術を使った新型浮遊艇”ジェリーフィッシュ"。

その開発者6名を乗せて航行試験に飛び立った数日後、雪山の奥深くで不時着して燃えているのが発見される。

事故かと思われたが、実は遺体で見つかった6名全員に他殺の跡があり…

7人目の犯人は一体どこから現れ、どこに消えたのでしょう!?

というお話。

 

警察のマリア・漣コンビの調査と、雪に閉ざされたジェリーフィッシュの中で起きる事件、そして犯人の独白が交互に描かれます。

スリル満点の展開、過去の事件との関わりをほのめかす二重三重の伏線にページをめくる手が止まりません。

デビュー作にしてこの安定感、言葉の巧みさ、すごいです。

ジェリーフィッシュを巡るSFの世界観もこの作品の魅力になっています。

 

市川さんの言葉に惹かれて

冒頭に著者の「受賞の言葉」が載っているのですが、これがいいのです。

 

長い遠回りをしてきたように思います。

学生時代からの夢に正面から向き合うこともできず、仕事に振り回された後でわずかに手元に残った時間を、日の目を見るあてのない話作りに費やすだけの日々でした。

ですが今、回り道を終えて改めて本作を読み返してみると ー 無駄だと思っていた日々の足跡が、作品のいたるところに刻み込まれているように思います。

 

昨夜、小さい頃からの夢と回り道とも思える人生に思いを馳せていたぽわろんはこの言葉がジーンと胸に染みました。

 

そんな思いを書き連ねた昨日のブログ↓

 

日々の足跡が、いたるところに刻み込まれいる、そんな風に思える生き方って素敵だなあと感じたのでした。

 

2作目を読むのも楽しみです!