ぽわろんの推理ノート

仕事について、人生について、人間のあれこれを考察します

『終りなき夜に生れつく』アガサ・クリスティのダークな世界

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こんにちは、ぽわろんです。

 

今日はぽわろんの大好きなアガサ・クリスティ作品から、とっておきの作品をご紹介したいと思います。

 

それが、こちら。

『終りなき夜に生れつく』(原題”Endless Night”)です。

終りなき夜に生れつく(クリスティー文庫)

終りなき夜に生れつく(クリスティー文庫)

 

 

自身も認める傑作

この作品はいわゆるクリスティのノンシリーズに当たり、ポワロやマープルといったお馴染みの探偵が出てきません。

 

そして誰もいなくなった』や『オリエント急行殺人事件』などと比べると知名度は低いかも知れませんが、クリスティ自身が選んだ自分の作品ベスト10には『終りなき夜に生れつく』が入っていたと言われています。

 

クリスティ作品は名作が多く、ぽわろんも自分の中でベストを選んでみたいと思ったこともありますが、10作に絞れないというのが正直なところです(>人<;)

しかし、この『終りなき夜に生れつく』は必ずやベスト10に入れようと決めている傑作です。

クリスティのすごさがギュッとつまった忘れがたい作品です。

 

どんな話か

主人公であり語り手のマイケル・ロジャースは『ジプシーが丘』という美しい土地に心を奪われます。

同時に『ジプシーが丘』は先祖代々呪われた土地として言い伝えられており、どこか不吉な雰囲気も漂わせています。

そんな地で、ある日彼はエリーという大富豪の娘と出会い恋に落ちて、夢であった自分の家をジプシーが丘に建てることなるのですが…

 

という、クリスティ作品の中でも詩情的な作品で、雰囲気で言えば『春にして君を離れ』などメアリ・ウェストマコット名義で書いていた小説の作風に似ているような気がします。

 

殺人事件というより、前半は恋愛小説や立身出世の物語のように読めます。

どこか暗く禍々しい雰囲気が付きまとい、得体の知れないような不気味さを感じます。

その不気味さの正体は後半の展開ではっきりするわけですが、その衝撃はものすごいです。

決して前半で、「ただの恋愛小説か」と読むのをやめないでください!笑

 

後半の展開、クリスティの得意なトリックをここで持ってくるか!という感じなのですが、初めて読んだ人は度肝を抜かれると思います。。

ぽわろんは、しばし呆然としてしまいました。笑

そして襲ってくる恐怖。こわ…。

最後には物悲しさと、やるせなさで切ない気持ちになり…そして、どこにどう伏線があったのか、もう一度最初から読み直したくなるという無限ループです。

そして読めば読むほど、そのすごさがわかるという…。

 

いや、クリスティの真骨頂だと思います。

人間の「闇」を効果的に描くためにクリスティの技術を全部費やしたら、こんな作品ができましたいう感じです。

 

ぽわろんは何度読み返したかわからないくらい、心に深く残る作品です。

 

映画もあります

この作品、映画化もされています。

エンドレスナイト』(1971年)です。

 

個人的には、一体「どうやって」この作品を映像化したんだろう!?に興味があって観たのですが、やはり映像で再現するのは難しいものですね。

なので、まだネタを知らない人は、ぜひ先に本を読むことをおすすめします(*^▽^*)

 

映画の良いところは、ジプシーが丘の情景が映像で見られたり、建てた家がどんな家か楽しめたり、エリーの歌声が実際に聴けるところですね♪

本の中の雰囲気がちゃんと出ていました!

 

ただ、このエリーの歌うシーンは小説の中でも印象的なシーンなのですが、ここでエリーの言うあまりに重要な(?)セリフは、そのまま使って欲しかったなぁ!なんて個人的に細かな要望もあったり…。

 

興味がある方はぜひ本と映画を見比べてみてください(*'▽'*)

 

ついに原作も読んだ

そして、最近英語を勉強しているぽわろんは、ついに原作の”Endless Night”に挑戦してみました。

 

Endless Night (Agatha Christie Collection)

Endless Night (Agatha Christie Collection)

 

 

英語を勉強している理由の一つに、「大好きな作品を原作そのままで読みたい」という願いがありました。

そして最初に読むならクリスティでしょう!とこの作品を選びました。

 

さすがに何度も翻訳を読んでいるので、ストーリーはわかります。

なので、英語の難しさはあっても、あまり苦労せず読むことができました。

これがクリスティの文章か…と感動しながら味わって読みました(*^▽^*)

 

ちなみに、印象的なエリーが歌うシーン。

日本語だとこんな歌詞でした。

 

夜ごと朝ごと

幸せと喜びに生まれつく人あり

幸せと喜びに生まれつく人あり

終りなき夜に生れつく人もあり

 

 

英語ではこんな歌詞でした。

 

‘Every Morn and every Night

Some are born to Sweet Delight,

Some are born to Sweet Delight,

Some are born to Endless Night.’

 

英語の方が強弱のリズムが毎行揃っていますし、NightとDelightで韻が踏んであり、より「陰と陽」の対比が際立っていますね。

 

タイトルの”Endless Night”はそのまま日本語に訳すと『終りなき夜』ですが、この歌から『に生れつく』という意味を付け足したのでしょうね。

素敵なセンスです♪

 

 

そして、例のエリーの台詞。

‘You’re looking at me as though you loved me …’

 

エリーは何を言わんとしていたのでしょう…?

それを考えると切なく、いたたまれぬ気持ちになるのです。

 

最後に

決して後味の良い小説ではありませんし、謎解きを楽しむタイプの作品でもありません。

しかし、やはりクリスティ作品の素晴らしさを表現するには外せない作品です。

 

クリスティは好きだけど、まだこの作品は読んでないという方がいましたら、ぜひおすすめしたいです(*^▽^*)